本かつお
記事内に商品プロモーションを含みます

●なぜ気になったか
見慣れない言葉「行動栄養学」。氾濫し混乱する「食と健康」の情報を整理したらしい高レビューな過去作もある著者。日頃の食の疑問を減らせるかもなので読んでみたい
●読了感想
エビデンスに基づいた説明がなされた内容で、とても参考になった。「果物は太る」はあくまで推論で正しいとは限らない、など根拠なく信じていたことがいくつかくつがえされて有益であった
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- 食品という栄養素は健康という布を織るための縦糸と横糸である。
- 体は食品でなく栄養素を認識し、人は栄養素ではなく食品を認識します。
- 日本人の水の摂取源は固形の食べ物からが50%。加齢とともに食が細くなるので、高齢者は水の摂取量が減りがち。
- 質の高い「食品成分表」は健康的な食生活のための基盤
- 「どれくらいまでなら糖質を摂取してよいのか」の基準は日本にはまだない。糖類の「食品成分表」の策定が遅れていたことがおもな理由
- 人が食べるべき量は栄養素で決まるが、私たちの目に見えるのは料理や食品。その間をつなぐのが食品ベースガイドライン
- 学校の成績は、家庭の要因もからみ、朝食をとればが上がり抜けば下がるといった単純なものではなさそう。
- チョコレートに豊富なポリフェノールは動脈硬化の予防作用が期待されている。しかし、エネルギーが高く、飽和脂肪酸が多いので、すぎたら逆効果かも。
- 砂糖に比べて血糖値を上げない人工甘味料だが、糖尿病発症率は高い。それは、人工甘味料が糖尿病を起こしたのではなく、自分の食生活が「まずい」ことに気づいて人工甘味料に変えたものの「時すでに遅し」だったから。
- 大阪人は食塩をたくさん取る人ほど血圧が低いという結果がでたが、それは、血圧が高くないうちはあまり減塩しないのに、高いとわかると急に減塩を始める傾向が強いから→因果の逆転
- 最初の研究は少し盛られているかも知れない
- コーヒー、緑茶、紅茶にはすべて心筋梗塞を予防する効果があり、その効果はほぼ同じ。
- 太っていない人や日本型の食習慣の人への、ベジタリアンとビーガンのメリットはよくわかっていない
- 適量飲酒で寿命は延びるか?は、 寄与危険で計算してみると、お酒に健康効果はない
- 魚をまったく食べなかった人に比べると食べていた人のほうが少し認知症の発症率が低い。
- 魚だけ、DHA・EPAだけといった単独の栄養素だけでは望み薄。血圧、体重、血糖管理などが先決
- 「β-カロテンで肺がん予防」は、摂取量の範囲に注意
- 葉酸で循環器疾患予防は、摂取量によっては有効。1日あたり400μg以上が効果あるが、多く摂取しても効果は変わらない
- タンパク質摂取量は、体重1kgあたり0.8gくらい。ただし、高齢者は筋肉や筋力を保つために1.0〜1.2gと考える研究者も増えている。
- 虫歯を予防するには甘い飲み物を中心に糖類全体の摂取量をできるだけおさえること。エネルギー摂取量全体の10%未満、できれば5%未満。
- ほとんどの食事調査法で、本人からのエネルギー摂取量は過小に申告される。さらに肥満度に比例してそれは深刻になる。
- 人は無意識に自分に都合がよい情報を選び、そうでない情報を避ける傾向がある。
- 指導対象者による忖度が入ると効果が大きく見えてしまう
- サプリメントを飲んでもらって骨折の予防効果を確かめるという疫学研究(介入研究)を行うのがむずかしく、有効性はまだよくわかっていない
- エネルギー摂取量の揺れの平均は611kcal
- 栄養素の摂取量を知ろうとすれば、実現不可能なほどの長い期間が必要
- 日本人の食習慣は、食品やその品種などには季節変動が見られる一方で、栄養素摂取量には季節変動があまりなく、その両方を享受しているという理想的な状態と言える
- 速食いで太る傾向が見受けられるが、「肥満の人がゆっくり食べたらやせる」かどうかはわからないので、研究はまだ十分でない
- 「天然塩」だからといって血圧が上がらないわけではない。
- サラダとパスタ、いっしょに食べるより、サラダを先に食べるほうがサラダを多く食べられる。
- 「果物は太る」は、実際に観察された事実ではなく、「果糖はエネルギーを持つ」という事実に基づく推論
- 乳酸菌で呼吸器感染症は予防できるか?の答えを出すのは、まだ少しむずかしい
- 健康的な食習慣は、所得よりも教育が決め手のようである
- 独居と孤食とうつ傾向は密接かつ複雑に関連している
- 料理を作ることの健康への効果は、栄養以外のところにもありそう。
- 料理を「日常的に繰り返される軽いトレーニングと能動的で複雑な頭のトレーニング」ととらえるとその理由の一端がみえてきそう。
- 「体内の栄養学」と「モノ(食品)の栄養学」
- 「分析の科学」と「統合の科学」
- 栄養学の縦糸と横糸
- 食品成分表は「モノの栄養学」の領域だが、「体内の栄養学」への橋渡し役を果たすもの
- 食品や料理の種類と量を決めれば、栄養素の量はただ1つに決まるが、逆は成り立たない。
- 栄養学は自然科学(いわゆる理系)に収まりきる学問ではなく、人文科学(いわゆる文系)まで広がる壮大な学際科学である。
●目次
- はじめに
- 第1章 食べ物も栄養素も… 栄養学の縦糸と横糸
- 1 「健康的なチーズトースト」を数学で解く 食品と栄養素の連立不等式
- 2 飲む水、食べる水、栄養素としての水 加齢による必要量の変化
- 3 日本人の糖類摂取量がわからない!? 「食品成分表」策定の遅れと基準の関係
- 4 バランスよく食べるための実践ツール 食品ベースガイドラインでわかること
- 第2章 要素がありすぎて… 複雑系
- 1 朝食欠食と学校の成績 関連の複雑さと交絡
- 2 チョコレートと心筋梗塞予防 多要因疾患の考え方
- 3 人工甘味飲料が糖尿病を増やしたように見えるからくり 時間の流れと交絡
- 4 食塩と血圧、卵と心筋梗塞 因果の逆転で変わる見え方
- 5 ビタミンCでかぜは防げるか? ヒト研究の不安定さ
- 第3章 どれを食べれば…? 相対重要性
- 1 心筋梗塞予防にはコーヒーか紅茶か? 相対重要性を考える
- 2 ベジタリアンとビーガン 減る病気と増える病気
- 3 適量飲酒で寿命は延びるか? 相対危険より寄与危険
- 4 魚(DHA・EPA)で認知症は防げるか? 単独より組み合わせ
- 第4章 どれだけ食べれば…? 量・反応関係
- 1 「β-カロテンで肺がん予防」の教訓 摂取量の違いと結果の違い
- 2 葉酸で循環器疾患予防 飽和する栄養素
- 3 プロテインでサルコペニア予防 たんぱく質の飽和点を探る
- 4 糖類と虫歯 許容摂取上限量と日本の役割
- 第5章 つい食べすぎたり・隠したり… バイアス
- 1 知らないほうが幸せだったか? 「系統誤差」の怖さ
- 2 飲酒直後は心筋梗塞が起こりにくいか? 呑んべえの「確証バイアス」
- 3 減塩教室の効果と忖度 指導を受ける側の心理
- 4 カルシウムとビタミンDのサプリで骨折は予防できるか? 研究参加者の心理
- 第6章 なにを食べたかわからない… 食行動を測る
- 1 今日という偶然 エネルギー摂取量の日間変動
- 2 習慣を知るために必要な日数 栄養素摂取量の日間変動
- 3 「旬」と摂取量 食品群の季節差と栄養素の季節差
- 4 速食いと肥満 行動栄養学研究の20年を覗く
- 第7章 気になる話に惑わされ… 健康栄養情報と食行動
- 1 天然塩はどれくらい血圧にやさしいか? イメージと事実の乖離
- 2 どうすればもっと野菜を食べてくれるのか? 食育のノウハウを創る研究
- 3 「果物は太る」の刷り込み なぜそう信じ続けてきたのか?
- 4 乳酸菌と呼吸器感染症予防 研究は結果よりも方法の質
- 第8章 「食べる」はつながり広がって… 社会で食べる
- 1 学校給食 「食べる教材」としての役割
- 2 所得の違いと食習慣の違い 教育の価値は?
- 3 独居と孤食とうつ なにを食べるか・だれと食べるか
- 4 料理好きは健康か? 栄養以外の効能を考える
- 第9章 終章 栄養学のミッシングリンク… 行動栄養学とはなにか?
- 栄養学を再整備する
- 求められているパラダイムシフト
- おわりに
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。