本かつお
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●なぜ気になったか
今現在町内会に参加しているし、数年前会長も務めた。現時点全戸参加しているが、行事への参加具合差や高齢独居世帯の増加などの問題も出ている。存在や存続意義について考えてみたい
●読了感想
今はそうもめることなく全戸加入運営のわが町内会だが、この先面するであろう懸念解決への参考を求めて読んだ。町内会の歴史、著者の「おわりに」の章が特に参考になり、最低限、域内住民が「共同防衛」意識をもった集まりは残すべきと思った
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- よくあることだが、町内会に入らないなら、ごみ集積場を使わせないとか、周辺の防犯灯を撤去するという「いじめ」のようなことが起こる
- 重要なのは、そのような社会関係資本(地域のさまざまなネットワークの広がり)を維持することであって、町内会という組織そのものを維持することではない
- (著者としては)、町内会を次のように定義しておきたい。町内会・自治会は、「共同防衛」を目的とする「全戸加入原則」をもった地域住民組織である
- 町内会が民間の団体である限り、全戸加入を強制することなどできない。できるのは、無理は承知で、できれば全戸が加入してほしいと考えて活動するだけである
- (町内会の)存在は国家や自治体の立場からすると、たいへん都合のよいものである。だから今でも行政は躍起になってその存続を図っている。そのことがかえって町内会には重荷になって、事態が悪化している
- 全戸加入を原則とする地域住民組織が取り組むべき機能として、土地や空間をめぐる共同管理を想定するのは、それなりに説得的な議論である。しかし、それはどちらかと言うと、農村や漁村を想定した部落会や自治会に適合的な議論であって、都市部の町内会では想定しづらいところがある
- 町内会と地方自治体に共通する「共同防衛」という本質的な機能の存在。(中略)、共同防衛は特定の地域的範域を区切って、その内部の人間がすべて共同で防衛に当たらなければならないのである
- 内会の性格は、近隣親睦をこととする基礎集団と、共通の利益を追求する機能集団の二つに大別することができる
- 日本の行政が一貫して町内会や部落会のような地域的組織を活用し、協力を求めることで、人々を統治してきた
- 人々が集まって暮らす聚落が成立するには、二つの基本的な機能(「生活協力」と「共同防衛」)が満たされていなければならない
- 町内会は、政府の側から見るならば、きわめて好都合な住民組織であった
- (これからは)町内会のような住民組織が存続することが当たり前と考えることを、やめるところから始める必要がある
- 町内会はいわば公共財のようなものである。 (中略)、あると助かるし、いざというときありがたいが、日頃からそれを積極的に支えようとは、誰も思わない。それは、誰かがやってくれれば助かるが、できれば参加したくないものなのだ
- 自治会・町内会の活動力の低下を、実は一番心配しているのは行政である。(中略)、行政からすれば、自治会・町内会であろうが、市民活動団体であろうが、最大動員システムとして行政への協力が調達できれば、どちらでもよいのである
- 自治体の行政や議員がその声を聴かざるをえない特権的な場を、町内会が確保してきたというこの成果は、住民にとってはかけがえのない財産なのである。このことは継承するには値する、捨ててしまうには惜しい成果なのである
- (町内会の)活動自体が住民や担い手の負担になったり、行政の下請け仕事で役員が疲弊するようなことは、極力避けるべきである
- (町内会の)活動はなによりその担い手自身が楽しめることを優先し、地域の人たちがそれとなく知り合える親睦を旨とすべきである。行政からの要請には、ときとしてそれを断る勇気をもつべきである。
●目次
- はじめに
- 第一章 危機にある町内会
- 町内会が消える?
- 首都圏近郊の状況
- 超多忙な町内会長
- 「自分の代で終わりにします」
- 「やめるならごみ集積所を使うな」
- 震災以降の過剰な期待
- 「きずな」と「共助」
- 町内会を知らない若者たち
- 本書での表記ーー町内会、町会、自治会、部落会
- 町内会の定義し共同防衛を目的とした全戸加入原則
- 町内会と労働組合、国家と地方自治体
- 本書のねらい
- 第二章 町内会のふしぎな性質
- 町内会とは何か
- 町内会の特異性
- 町内会の理論的説明を求めて
- 中田実の地域共同管理論
- 安田三郎の町内会=地方自治体説
- 鳥越皓之の本質起源論
- 部落会と町内会
- 共同防衛という本質的機能への着目
- 国家、地方自治体、町内会に共通する機能
- 町内会成立の典型
- フーコーの統治性研究
- 「統治性」
- 「階級性」
- 統治性との関連で
- 階級性との関連で
- 第三章 文化的特質か、統治の技術か
- 町内会=文化の型論
- スープと味噌汁の違い
- 日本人の自治感覚
- 日本的統治の特質
- 原型としての明治地方自治制
- 大区小区制と地和改正反対一揆
- 村落の社会構造
- 土族民権から豪農民権へ
- 地方三新法と国会開設の詔
- 松方デフレと豪農層の上昇転化
- 明治の合併と行政村の形成
- 制限選挙制のからくり
- 区長と区長代理
- 芸術品としての明治地方自治制
- 寄生地主制と共同体的秩序の利用
- 日本的統治の本質
- 第四章 近代の大衆民主化ーー労働者と労働組合、都市自営業者と町内会
- 明治地方自治制から町内会体制へ
- 明治地方白治制の動揺
- 寄生地主制と共同体的秩序の変質
- 男子普通選挙と治安維持法
- 労働運動の台頭と弾圧
- 日本の労働者の選択ーー経営家族主義から日本的経営へという道
- もうひとつの選択ーー一国一城の主=都市自営業者への道
- 町内会の起源について
- 町内会の成立過程
- 近代の都市化と町内会
- 共同防衛組織としての町内会
- 戦時体制と町内会の整備
- 臣民として認められた都市自営業者
- 大衆民主化の時代
- 労働者と都市自営業者
- 労働組合と町内会
- 戦時下の町内会
- 戦後改革と町内会禁止令
- サンフランシスコ講和条約と町内会の復活
- 町会連合会の結成と町内会の圧力団体化
- 住民運動と革新自治体
- コミュニティ施策の展開
- 町内会体制の確立と動揺
- 第五章 町内会と市民団体ーー新しい共助のかたち
- グローバル化と都市自営業者層の衰退
- 町内会体制がもっていた可能性
- 町内会と日本の政治構造
- 政治改革と自公連立
- 町内会への期待
- 例外としての町内会
- 避けられない町内会の弱体化
- 市民活動の台頭
- 水と油の町内会と市民団体
- 期待される雪解け
- 行政の思惑
- 統治性と階級性の矛盾
- 何を捨て、何を継承すべきか
- 協議、決定、要求する場としての町内会
- 市民活動団体の役割
- 代議制民主主義との関係
- おわり
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。