本かつお
記事内に商品プロモーションを含みます
●なぜ気になったか
本書が取り上げている「呪い」はよく目にすることだが、「確かにそうだよね」と思いつつもちょっと引っ掛かりも感じる。それらの「呪い」が徹底検証されているらしく、引っ掛かりの正体がなんなのかわかるかもしれないので読みたい
●読了感想
書かれている“呪い”が頭の中に居座り、その影響に単純に反応してしまうと、確かにネガティブな方向に気持ちを引っ張られてしまいそう。ただ、物ごとには二面性があるのだし、考えようによっては受容できる“呪い”もあり、複雑な読後感
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- (1人あたりGDPが)1位のルクセンブルクは人口が少ないため、労働力を補うために海外から約20万人もの労働者を呼び込んでいる。が、外国からの労働者は、(中略)、1人あたりGDPの計算には含まれない。ゆえに(中略)、1人あたりGDPは高くなる
- 人口の多い国だけで比べたら、(中略)、日本の1人あたりGDPは、世界34位から6位までジャンプアップする
- 「日本人は生産性が低い」(という呪いについては)、サービスの質も考慮したうえで、生産性を計算し直したら、(中略)、決して日本の生産性は低くない
- 日本は長らくデフレで需要が伸び悩んだため、企業はサービスの量を減らさざるを得ない。となれば最終的なGDPは下がり、それにともなって労働生産性も低くなる。(中略)、景気が悪いから生産性が低いように見えるわけだ
- (年長者が)老後も働き続けたとしても、(中略)、賃金の低い職に就くことがほとんど。(中略)、そのため、高齢者が多い国では、労働で付加価値を生み出す人の比率が相対的に下がり、それと同時に「1人あたりGDP」も低くなる
- 日本の年金システムは、必ずしも若者から高齢者への仕送りだとは言えない。(中略)、高齢者でも現役で働いているなら「支える人」に当てはまるし、若年層でも働けない状態にあるなら「支えられる人」に当てはまる
- 近年の日本で働く65歳以上の数は全体の25%だ。逆に現役世代で就業していない人も多く、その割合は30%近くに達する
- 就業者を非就業者の数で割り、今と昔の「支える人」と「支えられる人」の関係を調べたら、(中略)、この45年間、日本人はずっと「働いていない人」1人を、ほぼ「働く人」1人で支え続けており、負担の量が激増したわけではない
- 絶望の”呪い”とつきあうには、もうひとつ「意識して希望を持つ」という心構えも必要となる。(中略)、「これから景気がよくなる」と思う人が増えるほど、その後で経済が改善する確率も上がる
- 「自分が望む感情と現実が一致しない人」ほど幸福度が低い(逆に一致すると高くなる)。(中略)、興味深いのは、この現象が私たちの「感じたい感情」がネガティブなものだったときにも起きるところだ
- 「苦痛のパラドックス」、(中略)、これは私たちが抱く価値の感覚は、「苦痛の総量」に左右されるという考え方。(中略)、本当に幸福感を高めたいなら、どうしても苦痛の体験が欠かせない
- 良性マゾヒズム。(中略)、私たちの脳は、不快な感情を抱くほど、その先にある心地よさや快感をよりよく認識できるように設計されている
- (北欧は世界で最も幸せな地域、は)本当だろうか。ノルディック諸国といえば、かつては世界でも屈指の自死が多い地域。(中略)、そもそも(たった1つの質問で判断する)「世界幸福度報告書」に問題がある
- 小さな工夫でも、それが何かを改善した感覚さえ与えてくれれば、私たちは大きな満足を得られるらしい
- 〝情熱〟は短期的にモチベーションを押し上げてくれる一方で、長期的には燃え尽き症候群のリスクを高める
- 「目標の副作用」①不正の増加、②視野狭窄、③リスクテイクの増大、④組織文化の腐敗、⑤やりがいの低下
- 正解のない問題に挑むときには、「どれだけよい結果を出すか」よりも、「どんな姿勢で挑み続けるか」を意識したほうが思考の柔軟性を保ちやすくなる
- いかなる正論も、度をすぎれば〝呪い〟に変わる
- 「ただ1つだけの考えしか持たないときほど、危険なことはない」
- そもそもヒトの脳は、危険や脅威に対して敏感に反応するように進化してきた。(中略)、そのため私たちは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く注意を向け、「否定的な話=重要な話」と自動的に認識するようになった
●目次
- はじめに
- 序章 「呪い」とは何か?
- 「なぜ呪いで人は死ぬのか?」
- 人間は”呪い”に弱い生き物である
- 自分はメディアに踊らされたりはしない
- 自分の意志に導かれない”オートマトン”
- 第1章 あなたの未来には、なんの希望もない
- 呪いⅠ 「この国は、終わっている」
- GDPに代わる指標
- 類似の呪いⅠ-Ⅰ 「日本人は生産性が低い」
- 日本の生産性が低いのは高齢化のせい?
- 類似の呪いⅠ-Ⅱ 「日本人は劣化している」
- 本当に日本人のモラルは崩壊したか?
- 類似の呪いⅠ-Ⅲ 「少子高齢化する日本は衰退するしかない」
- 最も大事なのは「工夫」と「アイデア」
- 現役世代の負担はどこまで重い?
- 「社会保障費増大」の落とし穴
- 絶望の”呪い”と、どうつきあうか?
- “呪い”が現実を形作る
- 第2章 幸せにならなければ、生きる意味はない
- 呪いⅡ 「人は幸せになるために生きている」
- ネガティブでも幸福度が高くなる意外なケース
- 偽りのポジティブはネガティブな効果しか生まない
- ネガティブな感情をじっくり味わう
- 類似の呪いⅡ-Ⅰ 「楽しいことだけをやれ」
- 快楽と充実
- 類似の呪いⅡ-Ⅱ 「他人の目など気にせず、自分らしくしろ」
- 本音を隠して病む人と病まない人の違い
- 幸福系の”呪い”と、どうつきあうか?
- ブランチフラワーらの研究が映し出す”北欧の真実”
- 第3章 競争から降りて、みんなで貧しくなろう
- 呪いⅢ 「もう成長はいらない」
- 人間は”エ夫好き”な生き物
- 工夫を是としないソ連はどうなったか
- 経済成長なき社会は失業者を増やす
- 類似の呪いⅢ-Ⅰ 「競争から降りて楽に生きよう」
- 競争から降りても、いずれ海は血に染まる
- 類似の呪いⅢ-Ⅱ 「金持ちと貧乏人の差は開く一方だ」
- 相対的貧困率と資産格差
- 『21世紀の資本』三つの問題点
- 脱成長の”呪い”と、どうつきあうか?
- 見えないコストを意識すれば、居場所が見つかる
- 第4章 情熱のない人生は、無に等しい
- 呪いⅣ 「情熱を持って仕事に取り組め」
- 情熱を追い求めると、人生の可能性が狭まる
- 「好きなこと」よりも「大事なこと」
- 類似の呪いⅣ-Ⅰ 「大きな目標を持て」
- 目標のうまい乗りこなし方
- 類似の呪いⅣ-Ⅱ 「効率を上げて、生産性を高めよう」
- 効率化を追求した大企業で何が起こったか
- 情熱系の”呪い”と、どうつきあうか?
- 情熱と目的は「一点集中」ではなく「分散投資」
- 無駄の効能
- 第5章 人生は生まれで決まり、努力には意味がない
- 呪いV 「人生は遺伝で決まる」
- そもそも遺伝率とは何か?
- 遺伝率が大きくても、遺伝子の影響が大きいとは限らない
- 遺伝率は「科学史上、最も誤解を招く概念のひとつ」
- 類似の呪いV-Ⅰ 「性格は死ぬまで変わらない」
- 性格は柔軟なオープンシステムである
- 類似の呪いV-Ⅱ 「努力する才能も、遺伝で決まる」
- 遺伝子は運命ではない
- 遺伝の”呪い”と、どうつきあうか?
- 遺伝率には、希望も絶望も存在しない
- 終章 なぜ人は人を呪うのか?
- 【巻末】NFCテストで自分の「認知の複雑さ」を判断する
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。