読了

身近な気象のふしぎ/近藤純正

本かつお
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●なぜ気になったか

わが身が感じるほんの些細な変化や、ニュースでみる災害の悲惨な状況まで、気象が関係する状況変化に興味や驚きを感じる。抱き続けている疑問が目次にあったので読みたい

●読了感想

数式が頻繁にでてくるとても専門的な内容でだいぶ読み飛ばし。しかし、説明は理解しやすく、一番知りたかった、日によって平地での風の強さに大きな差があったりする理由はある程度理解できた

アマゾンレビュー なし

●心に響いたフレーズ

  • 地球の温度は、地球・大気系に入る太陽からの短波放射量と地球・大気系が放つ、長波放射量がバランスすることで決まる
  • 大気中に含まれる温室効果ガスが増えると、大気から地表面に注がれる長波放射量が増加し地表面温度が上昇する
  • 温暖化によって気温が上昇すれば水蒸気量が増え、地表面に入る大気放射量がより大きくなり温暖化が進む。温暖化によって雲量が増えれば、地球に入る太陽放射量が少なくなり地球の温度が低下する
  • 工業の近代化(1920〜1940年)と高度経済成長時代(1960〜1980年)は、大気汚染による日照量の減少に伴い、周辺海域を含む広範囲で蒸発量が減少し、その結果として降水量が少なくなった
  • 地球温暖化により気温が上昇すれば、地表面への入力放射量が増えて、蒸発散量が増加し、その結果として地球平均の降水量は増えることになる
  • 大都市では都市化昇温が地球温暖化による昇温を大きく上回っており、夏の猛暑日に起きる熱中症の原因となっている
  • 東京の大手町の1920年から2019年の昇温量は約2℃
  • 大都市では都市化昇温と乾燥化により霧の発生することがほとんどなくなった
  • 風速の弱い狭い所では日中の気温上昇量が夜間の下降量よりも大きく、日平均・年平均気温は高めになる。これを「ひだまり効果」による平均気温の上昇という
  • アーケード街は天井が厚い雲の効果を持ち、温室と同じように放射冷却を小さくしているため温度が高い
  • 風速の激しい時間変動は「風の息」と呼ばれ、大気安定度が不安定なとき(陸上では日中)に激しく、安定なとき(陸上では夜間) に弱くなる
  • 風速の時間変動は大気安定度と地表面の粗度に依存する。風速の時間変動が激しいのは乱流が強いことである。乱流は大気を一様化し、同時に、熱や水蒸気や浮遊物質を効率よく上下方向に運ぶ働きをしている
  • 1994年夏に宮城県蔵王町の養魚場で起きた魚の大量死事件は、台風による川の氾濫復興で川幅を広げ川底浅く平らにしたこと、 周辺の樹木が伐採されたことにより、日当たりと風通しが良くなり、河川の水温が異常に上昇し、水に溶けている酸素量が減少したことによる
  • 大規模噴火があれば、成層圏に吹き上げられた噴煙微粒子が地球・大気系に入る太陽放射量を減少させ、エネルギーバランスが変化し、大規模スケールの気圧配置が変わる
  • 低緯度の水面の年蒸発量が高緯度の2倍もあるのは、日射量の違いでなく気温が高いから
  • 林内の気温は林内に入る日射量と林内の風通しよって変わる
  • 見通し不良の林内の気温は見通し良好に比べて0.3〜1℃の高温である。体感温度ではその気温差以上の高温となる。一般に言われている「夏の晴天日中の林内は涼しい」は正しくない
  • 猛暑の夏の森林公園において、見通しの良否による気温の差1℃は体感温度にすればより大きな差になる
  • 砂時計の動き始めにはオリフィス流下する砂の速度はが速いが、しばらくすると下のガラス球の気圧は上のガラス球に比べて高くなり落下速度は遅くなる

●目次

  • まえがき
     
  • 1 地球溫暖化
    • 地球・大気系の有効温度
    • 地表面に入る放射はどのくらいの量か
    • 温室効果はどのように起こるか
    • 潜熱・顕熱とは
    • 気温の長期変化から温暖化を探る
    • 長期的な気温観側の誤差
    • CO2の増加による地球温暖化
    • 備考:可降水量
    • むすび
       
  • 2 温暖化は降水量を増やすか?
    • 降水量の観画には誤差がある
    • 日本の降水量の長期変化をみる
    • 蒸発量は温暖化でどう変わるか
    • 備考:熱収支式の解法
    • 森林破壊による降水量の減少
    • ポテンシャル蒸発量(Ep)とは
    • Epを求めるときの注意
    • 森林破壊と蒸発散量・降水量の関係
    • 地上気温が高いほど極端に激しい降水が強くなるか?
    • 参考:飽和水蒸気圧
    • 重要な放射量の監視
    • 放射量の微小差を検討する
    • 参考:有効水蒸気量の全量を表わず実験式
    • むすび
       
  • 3 都市の気候と日だまり効果
    • 年最低気温の上昇
    • 都市化昇温観測の実際
    • 都市は乾燥化しているか
    • 参考:湿度の長期変化には誤差がある
    • 昇温・乾燥化による霧の減少
    • 日だまり効果とは
    • アーケード街はなぜ暖かい
    • 海岸から遠いほど気温は高くなる
    • むすび
       
  • 4 晴天日の夜が寒くなる理由
    • 晴天日の夜は寒くなる
    • 放射冷却とは
    • 葉面の温度と風速・雲量
    • 覆いで葉面の凍霜害を防ぐ
    • むすび
       
  • 5 昼夜と場所によって変わる風速と突風率
    • 大気安定度とは
    • 参考:大気安定度を表わすりチャードソン数
    • コリオリの力と地衡風
    • 備考:ズレの角度45°のエクマン螺旋
    • 参考:等圧線を斜めに横切る風の角度(風向)
    • 温度分布による風速の変化
    • 大気安定度と風速の鉛直分布
    • 地表面の凸凹(粗度)と風速
    • 風速の時間変動
    • 地表面の粗度が突風率を上げる
    • 海岸の突風によるトラックの横転災害
    • 防風林の効用
    • 時代による風速の見かけ上の変化
    • むすび
       
  • 6 河川改修と養殖魚の大量死事件
    • 河川改修による水温変化
    • 水温変化と魚の大量死事件
    • 河川の流量と水温を予測する
    • 眞鍋淑郎のバケツモデルと「新バケツモデル
    • むすび
       
  • 7 火山噴火と冷夏
    • 噴火後の異常な朝焼け・夕焼け
    • 噴火規模の定義(1999年までの噴火に利用)
    • 大規模噴火後は冷夏になる
    • 噴煙微粒子と直達日射量
    • 新しい大規模噴火の定義(2000年以後の噴火に利用)
    • 参考:気象庁の放射観測
    • 霧と雨天がもたらす東北地方の大冷夏
    • むすび
       
  • 8 蒸発・蒸散量と気温の関係
    • 熱輸送と温度
    • 地表面の熱収支式
    • 飽和比湿と温度の関係ーバルク式
    • 熱収支式を解いてみよう
    • 特殊な場合(その1:湿度が飽和のとき)
    • 特殊な場合(その2:無風のとき)
    • 参考:熱収支法
    • 葉面の蒸発(蒸散)効率とオアシス効果
    • むすび
       
  • 9 森林の水収支・熱収支と林内の気温
    • 降水量・蒸発散量・流出量の関係をみる
    • 森林伐探・火災による蒸発散量の減少
    • 葉面積指数と蒸発散量
    • 熱収支量の季節変化・日変化
    • 潜熱輸送量を理論的に考える
    • 日射の透過率や見通しと林内の気温
    • 林内の見通し(良好林と不良林)
    • むすび
       
  • 10 砂時計に学ぶ砂漠の気候
    • 砂時計の中の気象
    • 畑地の乾燥を砂で防ぐ
    • クイズ
    • 裸地面(砂漠など)蒸発をモデル化する
    • 裸地面蒸発モデルを使ってみる
    • 土壌の種類と蒸発・水資源量
    • 参考:土壌面蒸発を表わす式
    • むすび
       
  • 11 湧水の温度と環境変化
    • 東京の湧水温度の上昇
    • 温暖化と湧水温度
    • 都市化と湧水温度
    • 地中の深さと温度変化
    • 東京都内の気温の上昇は大きいか
    • 東京都内の湧水温度の上昇は大きいか
    • むすび
       
  • 12 空間の大きさと温度変化の時間
    • 冬期の室温変化
    • 床面の極小低温層
    • 地震観測壕内の温度を測る
    • 温度変化と時定数(追従時間)
    • 理論式による時定数
    • 放射時定数を求める実験
    • 時定数と規模ー小箱の中から地球まで
    • むすび
       
  • 13 大気・海洋の熱エネルギー移動と地球の気候
    • 波のある海面上の風速は対数則に従わない?
    • 参考:海面の粗度と砕波
    • 海面熱収支量をバラメータ化する
    • 参考:バルク係数の実験式
    • 参考:大気安定度が不安定で自由対流のときの交換速度
    • 参考:なめらかな面と粗面
    • 「気団変質実験AMTEX」の観測
    • 海面から大気への熱輸送の量黒潮による海洋熱輸送の量
    • むすび
       
  • 付録 大気境界層・熱収支水収支論の発展史
    • (I)1900年代初期の研究
    • (Ⅱ)1950年代のころの研究
      • 大気放射学
      • 接地層における相似則とKEYPSの式
    • (Ⅲ)1960〜2000年の研究
      • カルマン定数
      • 非常に安定なときの放射の役割
      • 海面(水面)のバルク係数
      • 備考:回転式風速計の動特性
      • 数値天気予報の試験開始
      • 気団変質実験AMTEX
      • 有效入力放射量の利用
      • 各種地表面の熱収支量の計算
    • (IV)2000年代の研究
      • 正しい地球温暖化量の評価
      • 温暖化と放射量の監視
      • 植物葉面の気孔の潜在的応答
      • 農業分野における気候変動対策
      • 植物の微気象環境に対する遺伝子レベルでの生理応答
    • (V)全球の陸面での熱・水収支と地球表層の水循環
       
  • あとがき

プロフィール
本かつお
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。
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