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「働き手不足1100万人」の衝撃/古屋星斗

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●なぜ気になったか

僕が後期高齢者になる頃に働き手1100万人不足。その時、現高齢者が甘受している介護サービスはどんなレベルになっているのだろう?ひとつの予想を読んで未来に備えたい

●読了感想

今のままでは、生活を維持するための労働をしてくれる人が2040年には致命的に不足することがわかった。解決策案には賛同。書かれているいい方向への展開が実現することを願うばかり

アマゾンレビュー

●心に響いたフレーズ

  • 2040年に日本では、1100万人の働き手が足りなくなる。(中略)、介護サービス職で25.2%、ドライバー職で24.1%、建設側で22.0%が不足することがわかった
  • 労働供給制約下の日本は、じつはさまざまな新しい可能性に満ちあふれる社会になるかもしれない
  • 高齢化率が高まるということは、社会において必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れ、慢性的な労働供給不足に直面するということだ
  • 今起こっている、これから起ころうとしている「人手不足」は、これまでの「人手不足」ではない。(中略)、景況感や企業業績に左右されず、労働供給量がボトルネックになって発生する
  • 加齢とともに労働の供給者側から消費者側へと徐々にシフトしていく。そんな「労働の消費者の割合が歴史上最も多い社会」を、私たちは迎えようとしている
  • (2040年の)生活維持サービスの労働力の充足率が最も低いのは新潟県であり、なんと58.0%である
  • 島根県の労働需給ギャップが小さいワケ。(中略)、働く女性の割合が全国1位であること、子育て世代の女性の有業率が全国1位であること
  • 2040年の未来において、(中略)、性別や年齢など関係なく誰もが活躍できる世の中をつくることなしに、今後の日本での生活維持サービスは成り立たない
  • 社会における労働の供給量(担い手の数)は、2027年ごろから急激に減少する。(中略)、労働の需要量(消費量)は、今後も横ばい、微増傾向で推移する
  • インバウンドで盛り上がる観光や飲食業では労働需給が急速に逼迫している。 こうした状況が、人材確保を経営課題の中で最も優先的に取り組まなくてはならないテーマとしている
  • (鉄道やバスを含め)、人が乗る、物を運ぶ機械を滞りなく運行させるための点検・整備という仕事が人手不足で機能不全を起こしたとき、それは私たちの生活が滞ることを意味する
  • 労働供給制約社会で最も懸念されるのは生活維持サービスである。(中略)、私たちが日頃恩恵を受けているあらゆる「生活維持サービス」は、すべてかけがえのない人々の労働によって提供されているのだ
  • 労働供給制約にすぐに効く打つ手など、どこにも存在しない
  • 今後、平均年齢が「60代半ば」の働き手によって担われる生活維持サービスが、どんどん出現してくる
  • 日本の15〜64歳の生産年齢人口における女性の就業率は70.6%。(中略)、ざっくり言えば、「ドイツやイギリスよりは低いが、アメリカやフランスよりは高い」
  • 女性の非正規労働者のうち「不本意だが非正規労働者である」割合は7.9%に過ぎない。(中略)、これはつまり、非正規労働者でありたいと思い、なっている女性が大半になりつつあることを示している
  • 65歳以上の就業率では (日本は)25.1%であり、主要国中でダントツに高い。次いでアメリカが18.0%
  • 労働供給契約社会に向けた4つの打開策、「機械化・自動化」「ワーキッシュアクト」「シニアの小さな活動」「仕事におけるムダ改革」
  • 生成AIやロボットに人間の仕事を奪ってもらわないと、日本は生活維持サービスが保てない
  • 消費者側がロボットやデジタル技術に対する寛容度を高めることは、デジタル技術を生活に豊かさにつなげていくために重要
  • 高齢人口のさらなる増加にともなって最も労働力が必要となる医療や介護の職種が、最も自動化が進みにくいという結果である
  • 2040年に予測される介護人材の需給ギャップは、テクノロジーによる効率化だけでは解消できない
  • (人手不足の)解決策となる打ち手には、(中略)、発想の転換が必要。その発想の転換の一つの例になるのが、〝ワーキッシュアクト〟。コミュニティ活動や趣味、娯楽といった本業の仕事以外の活動のうち、「誰かの何かを助けているかもしれない活動」を指す
  • (ワーキッシュアクト)は、「本人が自分のためにやっているに過ぎない」ことでも、結果として誰かを助けている
  • ワーキッシュアクトという人間の活動が、労働供給制約の一つの解決策になると考える。(中略)、労働供給制約社会の必要性は、人の働き方を新たに創造する潜在性を秘めている
  • (シニアにとって)幸せな高齢期の生活と両立する仕事・活動の要素として重要な3つのポイント。①健康的な生活リズムに資する②無理がない③利害関係のない人たちとゆるやかにつながる
  • 労働供給制約下では働き手こそが最も希少な経営資源。(中略)ムダの抽出と削減に手を尽くすことが、労働供給制約下で生き残る人材力の高い企業の要件となる
  • 早期に(機械化・自動化による)解決策に着手することで、生活面への悪影響の発生を2030年まで遅らせることができる
  • 労働供給制約は、人間の行動におけるさまざまな人と関わる部分の領域の重要性が増し、重要性が増すために促進され、その結果として「労働」自体のあり方を変えてしまうのではないか
  • 労働供給制約下では、消費者が労働供給の担い手であることを求められるシチュエーションが増える。例えば、セルフ会計の小売店。(中略)、消費者が単なる消費者でいられないのが労働供給制約社会だ
  • 未来予測❶「消費者と労働者の境目が曖昧になる」。 労働供給制約下においては労働者のタスクを消費者が一部担うことで、持続可能にすることができる
  • 日本の成長産業についての一つの提案が「省力化産業」。省力化産業とは、AIやロボット技術などの最先端技術によって人の仕事を省力化し、楽しく、豊かで、多くの人が参加できるものに作り替えていく産業のこと
  • 長い労働時間・非効率な生活の組み合わせによってもたらされる日本社会の息苦しさを、若者ほど我慢などせずに去っていく
  • 労働供給制約社会という新しい社会の出現は、(中略)、座して待てば危機的な生活維持サービスの破綻という結果をもたらす可能性が極めて高いが、危機感の高まりがさまざまな打ち手を芽吹かせていることもまた確かなのだ

●目次

  • はじめに
     
  • 第1章 働き手不足1100万人の衝撃
    • 生活維持のための労働力がなくなる
    • 人口動態に起因する人手不足のはじまり
    • 景気はたいしてよくないのに人手が足りない
    • 労働供給不足の慢性化がもたらす危機
    • 20年で生産年齢人口は1428万人減
    • 近畿地方の働き手が丸ごと消滅
    • 2040年の日本の大前提
    • 日本の労働力率は先進国ですでにトップクラス
       
  • 第2章 都道府県別&職種別 2040年の労働需給予測
    • ドライバーの不足率は24%【職種別シミュレーション】
    • 充足率75%以下は31道府県【都道府県別シミュレーション】
    • 人口67万人の島根県の需給ギャップが小さいワケ
    • シミュレーションを未来のために
       
  • 第3章 生活維持サービスの縮小と消滅
    • 人材確保は最優先の経営課題
    • エッセンシャルワーカーが足りない
    • 顕在化する警察官、自衛官のなり手不足
    • 生活が大変で、仕事どころではなくなる
    • イノベーションを起こす余力がなくなる
    • 労働供給制約によるパラダイムシフトがはじまる
       
  • 第4章 働き手不足の最前線・地方企業の窮状
    • 地方企業、自治体の切迫感
    • 【事例❶】「地元の企業同士で若者の取り合いになる」
    • 【事例❷】「人手不足で店を畳まざるをえない」
    • 【事例❸】「閑散期のはずなのに毎日仕事を断っている」
    • 【事例❹】「このままでは車検制度が維持できない」
    • 【事例❺】「減便でも『しかたない』ほどの人手不足」
    • 【事例❻】「配達員は70代、80代が中心。毎日1000部配達できない」
    • 上がる賃金、集まらない働き手
    • 「どうすればいいのかわからない」
       
  • 第5章 働き手不足を解消する4つの打ち手
    • 労働供給制約は日本を豊かな社会に変える
    • 賃金上昇で企業に求められること
    • 日本の労働生産性向上率は低くない
    • 自動化が進む製造業、卸売・小売業
    • 医療・介護分野は労働投入量が1・4倍に
    • 人手不足対策の〝三種の神器〟
    • 女性の就業率はアメリカよりも高い
    • 日本のシニア就業率は世界で断トツ
    • 「外国人労働者」獲得競争に日本は勝てるのか
    • 今、着手できる4つの解決策
       
  • 第6章 解決策❶徹底的な機械化・自動化
    • 〝人にしかできない仕事〟に人の力を活かす
    • 省人化は賃金上昇につながる
    • 省人化が進めば労働参加が拡大する
    • AIやロボットに代替不可能な業務とは
    • ブラック企業は労働供給制約時代に生き残れない
    • 自動化推進に欠かせない行政・業界団体の支援
    • デジタルに寛容なロボット・フレンドリーな社会へ
    • 社内の自動化のカギを握る人材の共通点
    • 自動化が進みやすい職種、進みにくい職種
    • 【事例❶】ゼネコン大手が建設業界の課題解決のために
    • 連携建設RXコンソーシアム
    • 【事例❷】発注から返品まで自動化を推進するスーパー
    • カスミ
    • 【事例❸】三大介助の負担を減らす製品・サービスを研究開発
    • FutureCareLabinJapan
       
  • 第7章 解決策❷ワーキッシュアクトという選択肢
    • 〝本業以外の活動〟が誰かを助けている
    • 動機は「楽しいから」「得をするから」
    • 【事例❶】アプリゲームで楽しみながら地域のインフラ保全
    • NPO法人 WholeEarthFoundation日本事務所 福田恭子氏
    • 【事例❷】楽しく参加できる「パトラン」で地域を守る
    • 認定NPO法人 改革プロジェクト代表理事 立花祐平氏
    • 成功事例に学ぶ3つのポイント
    • 4人に1人がワーキッシュアクトをしている
    • ワーキッシュアクトをする理由ベスト3
    • 地方のほうがワーキッシュアクトが盛ん
    • リモートワークの本当の価値
    • ワーキッシュアクトの意外な効果
    • 新しい〝働き方〟の創造
       
  • 第8章 解決策❸シニアの小さな活動
    • 〝誰かの役に立つ〟は仕事とは限らない
    • シニアがさまざまな活動をする理由
    • シニアの小さな活動が現役世代を助ける
    • 無償だとどんどん担い手がいなくなる
    • 小学校の用務スタッフをして社会へ恩返し
    • 高齢期の生活と両立する仕事・活動の3要素
       
  • 第9章 解決策❹企業のムダ改革とサポート
    • 労働需要を圧縮する「ムダ改革」
    • 週に6~7時間はムダな仕事をしている
    • ムダの抽出と削減を徹底する企業が生き残る
    • 社外活動を促進する「職場でのソーシャル・サポート」
    • 「会社の仕組み」が社外活動をサポート
    • 会社ができる労働供給制約の解決策
       
  • 第10章 2040年の〝新しい〟働き方
    • 解決策に着手すれば〝10年の猶予〟が生まれる
    • さらなる構造的な解決策が必要
    • 労働供給制約が「労働」のあり方を変える
    • 行政・ルールメーカーができること
    • 企業・雇い主と行政ができること
    • 個人ができること
    • 未来予測❶「消費者と労働者の境目が曖昧になる」
    • 未来予測❷「働き手が神様です」
    • 未来予測❸「労働が楽しくなる」
    • 日本の真の成長産業
       
  • おわりに—発明の時代

プロフィール
本かつお
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。
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