本かつお
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●なぜ気になったか
脳梗塞を患った人と家族はいったいどんな大変な状況になるのだろうと想像を巡らせたりすることがある。まさにその参考になる記録本を図書館の新着で見つけ、どんなことをあきらめずやり通したのか知りたくなった
●読了感想
一般的な考えでなく実体験を軸に書かれているので、普通とは逆の考え方であってもすんなり受け入れられる。この夫婦だからこその点もあるだろうが、当事者が読めば気持ちや行動が確実にいい方向に変わるはずの良書
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- できた喜びができない悲しみに勝るようになったのは、諦めなかったから
- (診断した先生方の言葉は、)「私たちの予想を超えた回復ぶり」。(中略)、初期の予想が次々に覆ってくる印象を受けます。要するに診断というのはその時点での未来予測みたいなものだろうと私は実感しました
- 訓練を嫌がる時、本当に嫌なのか、やろうとしても体が疲れて休息したいのか、家族であれば見分けがつく
- (自宅での介護に際し)、車椅子や介護用ベッドを用意するという発想自体が私にはありませんでした。(中略)、その根本には、「楽をするとそれに慣れてしまうのではないか」という懸念がありました
- 藍に含まれる何がどの様に(肌によい)効果を持つのか。(中略)、藍に含まれる物質の中でも特に「トリムプタンスリン」は、肌荒れの原因となる「マラセチアフルフル菌」を寄せ付けない力を持っています
- 夢は大きく、目標は小刻みに
- (夫が)、二本足で歩けることが、こんなにありがたいと思う日が来るとは、病になる前は考えもしませんでした
- 何よりも大事なのは病となった本人の回復。それは体の機能的な回復よりも、心の方が重要であるように思います。心が折れることで体にも影響が出ることは、何度も経験しました
- (障がい者にとって)、自分に向かって話しかけてくれる、自分を理解しようとしてくれると本人が感じるかどうかというのは、健常者が考える以上に大切であると私自身はこの病気を通して実感しました
- 辛い時には助けを求めることが大事とよく言われますが、助けを求めるという行動は、「それを受ける価値がある自分」を認めてこそできること
- 娘の同級生たちの悪意のない会話。夫が入院していたリハビリ病院は、建物も新しくデザイン性にも優れています。外から見ても目につくスマートな建物を指して、「脳卒中センターのくせに立派だよね」
- 明日がどうなるかわからないからこそ、過度の希望はもてないとしても、過ぎた絶望もいらない
- 転び方がゆっくりであったり、強く打ったりしなければ、大ごとにはならないということを私たちも学びました。ついでに、仮に骨折しても案外よくなるのだなというのは、三回の入院で経験しました
- リハビリとか、回復するということは、手足がより動くとか、体の機能が向上するということだけではない気がします。それによって、心が生き生きとなっていくことの方が大事なのではないでしょうか
- 不自由な体で、そうまでして出かける必要があるのかという意見もあるかもしれませんが、むしろ体が不自由だからこそ、外に出かけたほうがいいのだと私は思っています
- たくさんの方々の好意を受け取りながら移動し、旅をすることによって新鮮な感覚を取り戻し、そして生きている醍醐味を味わうというのは、回復を促進する上でもとても大切なことだと思うようになりました
- 不自由だけど不幸ではない。(中略)、何より、よくなろう、楽しもうとする小さな希望をずっと心の中に保っていられる。この状態を見る限り、私にとっては、十分に夫は「健康」であるように思えます
- (就職試験に落ちた私に先生がかけてくれた言葉)、「いいか、何が幸いするから分からないから。本当に何が幸いするか、わからないんだからね」
●目次
- プロローグ
- はじめまして
- わたしたちについて――簡単な自己紹介
- 第一章 ある日突然、夫が倒れた――胸部大動脈解離から心原性脳梗塞を併発
- 二〇〇八年三月一一日の夜、胸部大動脈乖離発症
- 救急搬送から病名判明
- ICUでの最後の会話
- 重度の脳梗塞発症
- 第二章 弘前大学医学部附属病院での日々
- 開頭手術
- 命の炎が消えませんように
- 食事を摂り始める
- 減圧手術から復元手術まで
- 脳外科の先生たちとの会話
- 四月二二日のお見舞い
- 渾身の「あ・り・が(とう)」
- 診断とは現状からみた未来予測?
- 大学病院からリハビリ病院へ
- 第三章 後遺症とのお付き合いが始まった――リハビリ病院へ転院
- 根気強く、少しずつ
- 自主訓練スタート
- 仕事と介護の両立が始まる
- 病棟の回復率向上に貢献?
- 靴底に穴が開くまで歩いた
- 自分が築いた世界に戻る
- 歩いて退院
- 第四章 築いた世界と行きつ戻りつ
- 病と人生の切っても切れない関係
- 夫が藍に惹かれた理由
- 大学と企業の共同開発提携
- 地元への貢献――山崎直子さんの宇宙船内服開発
- 訪れた多くの幸せ
- 第五章 在宅での生活
- 基本方針
- ひたすら歩くこと
- 弘前公園の四季を味わう
- 学生たちと歩くと早足に
- 歩く場所の確保がたいへん
- 介護保険のこと
- コミュニケーションをどうとるか
- 言葉は少しずつ出てきた
- 療法士さんの魔力
- ハワイの学会に参加したい
- 障害を持つ体での海外渡航
- 回復のピーク
- 第六章 家族それぞれの人生との交差
- 父の病状説明を受けた娘
- 学校と病院を行き来する中で
- 引きこもるという行動――許されざる存在という自己認識
- ヤングケアラーという言葉
- 社会の目に感じる怯えと怒り
- そして私の人生との関係――歴史の中には人がいる
- 環境の変化とアイデンティティの再構築
- ジェンダーを教える立場として
- 支えてくれた仲間たちへの限りなき感謝
- 第七章 そして今――日々の生活はバリア・アリー
- 日々の生活は二階で
- 骨折しても回復はする
- 排泄と回復の関係
- 心が体の動きを妨げる
- 階段を下りることへの挑戦
- 訪問リハビリスタッフお二方の協力
- 最初の一歩を踏み出す
- 心の持ちようが大事
- 正解は家族によって異なる
- よく笑う夫
- 目標パーソンを見つけることが大事
- スタッフの方々の姿勢がありがたい
- 手足が動くようになることだけが回復ではない
- 第八章 外食を楽しむ・旅に出る・趣味を持つ
- 外食する理由
- 「お手伝いしましょうか?」
- 社会の中で食べるおいしさ
- 旅先で買った結婚指輪
- 公共交通機関のサポートシステム
- 藍や染色への関心
- エピローグ――船は良い港に着くもの
- 奇跡と言われた回復を可能にしたもの
- 前を向く夫の姿に限りなき敬意
- 健康に生きるとはどういうことだろう
- 私を支えてくれた二つの言葉
- あとがき
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。