読了

庭の話/宇野常寛

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●なぜ気になったか

宇野常寛さんの主張は、理解できないところももちろんあるが、激しく共感できたり、モヤモヤした考えをスッキリさせてもらえたりすることも多いので気になる。本書にかかれている「庭」という概念はいったいどのようなことなのか知りたい

●読了感想

「そっか、確かに!」と、一段深掘りできる気づきを多くもらえた。僕もモデラーであり収集気質だったので似ているからか「孤独」に関する考え方には激しく共感。ページや難解な部分も多く、集中力と読解力不足を突きつけられた深みある本

アマゾンレビュー

●心に響いたフレーズ

  • 世界はいま「Anywhere」な人びと(「どこでも」生きていくことができる人びと)と「Somewhere」な人びと(「どこかで」しか生きられないびと)に二分されている
  • トランプは間違っていることや、嘘を述べている「からこそ」Somewhereな人びとを惹きつけているのだ
  • 閉じたネットワーク=プラットフォームにおける相互評価のゲームにより、(中略)、人間は他の人間の顔色をうかがうだけしかしなくなり、問題そのもの、事物そのものについて考えることを放棄する
  • 現在の資本主義と情報技術の不幸な結婚としてのプラットフォーム
  • 「できるだけ合わせて、なるべく逆らわない」かたちで介入することで、自然の力を最大限に引き出すことがもっともよい人間と自然とのコミュニケーション
  • 今日のインターネットは、人間間の承認の交換という笹薮に覆われ、それ以外の生物(コミュニケーション)が衰微した、暗く、貧しい森なのだ
  • 三つの「庭」の条件。第一にまず、「庭」とは人間が人間外の事物とのコミュニケーションを取るための場であり、第二に「庭」はその人間外の事物同士がコミュニケーションを取り、外部に開かれた生態系を構築している場所でなくてはいけない。 そして第三に、人間がその整体系に関与できること/しかし、完全に支配することはできない場所である必要がある
  • 「みんなといてもいいし、一人で過ごしてもいい」(中略)、ばらばらのまま人びとがつながっている状態
  • 共同体が実際にほんとうに社会の周辺にいる(弱者たる)人びとを包摂しうるのか、 私には強く疑問だ。(中略)、そもそも共同体とは圧倒的に強者が得をするシステムだ
  • 共同体内の人間関係に依存した「贈与」経済と、国家等による再分配がなんらかの形で機能し、現金を持っていけば「誰でも」パンが買える資本主義経済、弱者に優しいのはどちらだろうか
  • (「孤独」は)、いま、社会福祉の「敵」として「ケア」の対象になりつつある
  • 「孤食」と「共食」の間の「縁食」という概念。孤独に食事を取るのでもなく、家庭や職場(の人たちと)食卓を囲むのでもなく、見知らぬ誰かと偶然に知り合うためにこそ誰かと食卓は囲まれるべき
  • 私は孤独を愛することを主張したいとは微塵も考えていない。ここで重要なのは、あくまで事物と純粋に向き合うためには、人間は一時的に孤独になること「も」必要だということ
  • 私は(人間関係が希薄だった)この時期、社会から半ば遊離し、「孤独」だったためにある方面(趣味など)では確実に忙しく、そして充実していた
  • 彼(秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大)に必要だったのは、共同体のもたらす濃密な人間関係ではなかったのではないか。実際に彼はインターネットの掲示板を通じて獲得した、ある意味においては濃密な人間関係に行き詰まり、それが暴走の大きな原因になっている。 (中略)、彼にほんとうに必要だったのは、むしろひとりでいるからこそ豊かに事物に触れあえる環境だったのではないか
  • 人間はときに、孤独で「も」あるべき
  • 本当に「弱い」状態にある人間にとって必要なのは「ひとり」でいても寂しくない場所
  • 完全な自己責任による人間と事物とのコミュニケーションに快楽を覚えたとき、つまり「ひとりあそび」を覚えたとき人間は孤独であるからこそ開く扉を通じて世界に関与できる
  • ひとりあそびのコツは「目的」を持たないこと。言い換えればその事物をゲームとして「攻略」しないこと
  • (タンザニアの出稼ぎ商人の言葉) (日本人は)働いて真面目であることが金儲けよりも人生の楽しみよりも大事であるかのように語る。(中略)、俺たちは真面目に働くために香港に来たのではなく、新しい人生を探しに香港に来た
  • タンザニアの商人たちは、単に人生を謳歌するための手段ーー自由を保障する金銭の獲得ーーとしてその事業を営む
  • 今日においてモノを「消費すること」からは、人びとがその味を覚えはじめたときのような魔力は失われている。(中略)、私たち人類はいま、みずからの体験を言葉や画像、映像を用いて発信すること、そしてそれが他者から承認されることに大きな価値を見出している
  • ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」、「より脅かしていないほう」、「より正義を語ら語らないを」、「より失礼でないほう」を選びます。そして「よりユーモアのあるほう」を選びます
  • 今日において、人間にとってもっとも簡単な自己表現は発信者になること。(中略)、タイムライン上に無数に発生している共同性に接続し、敵を名指しして味方からの承認を獲得することがもっともコストパフォーマンスに優れた承認欲求を満たすための回路
  • 「制作」に人間を動機づける。この「制作」の快楽は、覚えるハードルが高いが一度えるとなかなか手放せない中毒性がある。この中毒をどうもたらすかが最初の問題
  • 職業を形成する三つの要素、「生計の維持」「個性の発揮」「役割の実現」
  • (労働(Labor)を)「自分の仕事」にすることは、制作(Work)した事物を通じて公共性に接続し、世界に関与する実感を取り戻すことにもつながる
  • デモは意識の高すぎる「市民」を、選挙は低すぎる「大衆」を非日常に「動員」するシステム。(中略)、戦後日本の政治は「意識の低すぎる」選挙と、「意識の高すぎる」デモとが両方空回りすることで暗礁に乗り上げてきた

●目次

  • #1 プラットフォームから「庭」へ
    • 1 キーウの幽霊
    • 2 アフター・トランプの世界
    • 3 ゲームの二層構造
    • 4 十一世紀の<グレート・ゲーム>
    • 5 速さと画一性
    • 6 「動員の革命」と複数化
    • 7 「関係の絶対性」とその外部
    • 8 脱ゲーム的身体
    • 9 虫と花
    • 10 プラットフォームから「庭」へ
       
  • #2 「動いている庭」と多自然ガーデニング
    • 1 動いている庭
    • 2 地球という庭
    • 3 第三風景
    • 4 多自然ガーデニング
    • 5 小網代の森へ
    • 6 社会の第三風景、社会の多自然ガーデニング
       
  • #3 「庭」の条件
    • 1 人間「外」の事物
    • 2 事物の生態系
    • 3 関与できるが、支配できない
    • 4 「庭」の条件とその実装
       
  • #4 「ムジナの庭」と事物のコレクティフ
    • 1 武蔵野の森と、その続き
    • 2 リスタートの条件
    • 3 植木屋の福祉
    • 4 「小金井の家」から「ムジナの庭」へ
    • 5 「コレクティフ」をめぐって
    • 6 社会のコンパニオンプランツ
    • 7 事物のコレクティフ
       
  • #5 ケアから民藝へ、民藝からパターン・ランゲージへ
    • 1 ケアから民藝く
    • 2 事物のインティマシー
    • 3 「創造社会」への展望とその課題
    • 4 民藝とパターン・ランゲージの共通点
    • 5 「遅いインターネット」をアップデートする
       
  • #6 「浪費」から「制作」く
    • 1 「環世界」の移動とその条件
    • 2 「不法侵入」と動機づけの問題
    • 3 「浪費」から「制作」く
    • 4 「浪費」の失敗とその条件
    • 5 「変身」の継続条件
       
  • #7 すでに回復されている「中動態の世界」
    • 1 「中動態の世界」と情報社会
    • 2 TERRACE HOUSE 問題
    • 3 プラットフォーム上の「自由」と「強制」
    • 4 すでに回復された「中動態の世界」
    • 5 ケアと「責任」
    • 6 「中動態の世界」を一時停止する
       
  • #8 「家」から「庭」へ
    • 1 共同体を選ばない
    • 2 資本主義の外部
    • 3 怪獣使いと少年
    • 4 文脈と共同体
    • 5 人はなぜ「ナチスは良いこともした」と考えたくなるのか
    • 6 プラットフォームと共同体の共犯関係
       
  • #9 孤独について
    • 1 美味しんぼvs孤独のグルメ
    • 2 福祉の敵
    • 3 「孤食」を再評価する
    • 4 秋葉原はなぜ襲われたのか
    • 5 ひとりあそびのすすめ
       
  • #10 コモンズから (プラットフォームではなく)「庭」へ
    • 1 イーロン・マスクの「庭」
    • 2 コモンズのガバナンス
    • 3 コモンズから「庭」く
    • 4 銭湯のコレクティフ
    • 5 「夕方」の庭
    • 6 入浴と洗濯
    • 7 都市の動脈と静脈
    • 8 都市と交通空間
    • 9 交通空間としての「庭」
       
  • #11 戦争と一人の女、疫病と一人の男
    • 1 情報戦の優位と戦争の日常化
    • 2 戦争と一人の女
    • 3 疫病と一人の男
    • 4 真の恋人
    • 5 「である」ことでも「する」ことでもなく
       
  • #12 弱い自立
    • 1 「承認」でも「評価」でもなく
    • 2 アグリゲーターのいる会社
    • 3 プラットフォームをハックする
    • 4 弱い自立
       
  • #13 「消費」から「制作」へ
    • 1 対幻想から自己幻想へ
    • 2 消費社会と「語り口の問題」
    • 3 「消費」から「制作」く
    • 4 平時の恋人
       
  • #14 「庭の条件」から「人間の条件」へ
    • 1 二十一世紀の「人間の条件」
    • 2 「制作の行為化」をめぐって
    • 3 「制作」をエンパワーメントする
    • 4 「制作」の快楽とその困難
    • 5 「労働」から「制作」の快楽を知る
    • 6「人間の条件」をアップデートする

プロフィール
本かつお
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。
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