本かつお
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●なぜ気になったか
高緯度経済成長期に生まれ、バブル期に働き始めた世代の僕にとって、日本がどんどん沈んでいっていることを実感する。僕が救うなんてことはできはしないが、内田さんがどんなことに「沈む」と感じ、どう「救う」と考えているのかを知りたい
●読了感想
2025年の予言的内容で驚いた。「〇〇ファースト」、言わんとすることに共感できることがありつつも、同時になにか危険が潜んでいる感が拭えなかったが、それがなぜかを教えてもらえた。今は潜んでいる若い賢者がこの先行動を起こすことを願うばかり
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- 究極の安全保障は「その国が侵略されたり、破壊されたりすると私が個人的に困る」というステイクホルダーを全世界に持つことである
- 共感ベースで政治的判断を下すということは、理解も共感もできない人たちとのコミニケーションは初めから放棄するということ
- 自己利益の増大は必ずしも集団全体の利益の増大に結びつくわけではない。部分最適と全体最適はしばしば背反する。当たり前のことである。
- 今世界は再び野蛮に退行しているように私には見える
- ずいぶん前から日本のメディアは「現実を観察し、解釈し、その意味を明らかにし、これから起きることを予測する」といった一連の知的プロセスを放棄してきた
- 安倍・菅・岸田三代の政治の特徴は「国民の要望には一切応じない」という点にあった。(中略)、民意に応じると有権者はつけあがる。それよりも「お前たちは無力だ」と思い知らせる方が政権は安定する
- (日本は)、過去80年間、自前の安全保障戦略について、何も考えなかったし、議論もしなかったし、国民的な合意形成をめざしたこともない
- 統治者には共感よりむしろ猜疑心を向けよ
- 民主制における選挙とは全幅の信頼を託せる人を選ぶことではない。むしろ、国や自治体に害をなす可能性のある人をできるだけ公職に就けないためのものである
- ふつうは「組織に最適化した人」がトップになる。「組織に最適化した人」は別に「賢い人」ではない。(「必ず最も賢い人が選ばれてトップになる」わけではない)
- 「いい親」というのは「子どもにとって都合のいい親」(中略)、(子どもたちは社会でもまれて)、いつの間にか人間的成長を遂げる。親が「子どもを傷つける役」をわざわざ引き受ける必要はない
- 今の世界では、この近代的な国際秩序の概念にそのものが揺れ動き始めたように見える。(中略)、「自分第一主義」が支配的なイデオロギーとなってきた。個人も国家も「公共」から撤退しようとしている
- 「自国ファースト主義」をすべての国民国家が揚げれば、いずれどこも自分で自分の首を絞めることになる。というのは、「自分さえよければそれでいい」という構文の主語の「自分」はいくらでも小さくできるから
- 「世界のどの国にも住みたくない。何がなんでもこの国で暮らしたい」と全国民が思えるほど居心地のよい国を作ればいい。それなら国民は自分の国を守るためになら何でもしようと思うだろう
- 食物、医療、そして教育は絶対に合うとソースしてはいけない。(中略)、日本は医療だけはなんとか維持できているが、食物と教育についてはもう国内で国民が求めるものを創り出す力がなくなっている
- 戦闘機やミサイルを買う予算があるなら、農業と医療と教育に投じるのがほんとうの意味での「国防」である
- 江戸時代の人口は大体3000万人。(中略)、全国津々浦々に人が暮らし、生業を営むことができた。(中略)、人口1億2500万人では「人が少なすぎて」(中略)、と言われても、僕は納得できません
- 資本主義は人口が均等に分散している状態を望まない。(中略)、市場は「地方を過疎地にして、都市を過密地にする」ことを選択します
- この25年間日本の政治は一体何をしてきたのでしょうか? 少子化対策としては、「婚活」とか「子どもを産んだらお金をあげる」とか寝ぼけたことを言っているだけです。そこには日本の未来についての「ヴィジョン」がない
- この地震列島の上に暮らす日本人にとって「人口の一極集中」は絶対に採るべきではない選択肢なんです
- (明治時代は)人口5000万人でも、人々が健康で文化的な生活をしていた。(中略)、「明治政府の行った資源の地方分散の成功事例に学ぼう」という政治家は一人もいない。おかしいと思いませんか
- 賢者というのはだいたい「ダマ」になって暮らしている。(中略)、あまり賢くない人が統治者になったり、大富豪になっている国だと、賢者はまとまって野に逼塞してしまう。たぶん、そういうことが世界同時的に起きているような気がします
●目次
- まえがき
- 第1部 冷たい国の課題
- 第1章 衰退国家の現在地
- 「観光立国」という安全保障
- 士の本質は「痩せ我慢」
- 「死ぬ」とはどういうことか
- 「共感」に価値を置くことへの驚告
- 「最終学歴がアメリカ」を誇る、残念な人々
- 「組織マネジメント原理主義者」の危険性
- 加速する「新聞」の落日
- 「食糧自給率」が低いーーその思想的な要因
- 「虚無感」に苛まれている有権者たち
- 兵庫県知事選に見るメディアの役割
- 「民主政」の終わり
- 第2章 世界の中を彷徨う日本
- 第二期トランプ大統領誕生の「最悪のシナリオ」
- テキサス州が独立する可能性
- 「アメリカ・ファースト」はトランプの独創ではない
- 漂流する大国・アメリカ
- 日仏の「右翼」を比較する
- 日韓の核武装論
- 韓国の民主主義の強さ
- 第3章 温かい国への道程
- 「白票」は現状肯定でしかない
- 民主政の「未熟なかたち」と「成熟したかたち」
- 「自民一強」時代の終焉
- 女性の政治進出と良い政治家を生む土壌
- 大学存続の秘策
- 人口減少は受験生にとっては利
- 武道はスポーツか
- 「体幹」は野生の強大なエネルギーの通り道
- 身体円筒説
- 「正中線」について
- 植芝盛平と熊野の力
- 今、中高生に伝えたいこと
- 第2部 冷たい国からの脱却
- 第4章 社会資本を豊かにするために
- Ⅰ 近代の危機と再興
- 世界で何が起きているのか
- 「国家」より「非国家アクター」の存在感が増してきた
- 「テック・ジャイアント」というリスク
- 防衛反応としての「自国ファースト主義」
- 「三流独裁国」に転落しつつある日本
- 「愛国心」はプロパガンダで生まれるものではない
- Ⅱ 日本型コミューン主義の蘇り
- 「君民共治」という強い物語
- 基礎的な政治単位は「国家」ではなく「社稷」
- 理想を阻む、歴代の中間的権力者
- Ⅲ 血を流さずに国を変える道
- 「贈与したらなくなるもの」と「贈与しても減らないもの」
- 「知性」と「教養」を持った大人を増やす方法
- IV 農業を基幹産業にふるさとの「原風景」
- 失われてしまった「農業の比喩」
- 農作物は「商品」ではない
- 第5章 教育と自由 (「自由の森学園創立40周年記念講演」より)
- 経営者は「時流」に合わせ、同窓生は「変化」に抵抗する
- 「社会的共通資本」はゆっくり変化しなければならない
- 「教育」は惰性の強い仕組みにせよ
- 「私学」の存在意義とは?
- 問題は「人口減少」ではなく「人口分配の偏り」
- 急速に進む地方の過疎化問題
- 「教育資源」と「医療資源」の地方分散を
- 資源の地方分散は、政治主導でしか実現しない
- 本来、「危機耐性」に強い国をめざすべき
- 100年後に残る都市は「東京」と「福岡」のみ
- 人為的に過疎地と過密地をつくり出した「囲い込み」
- 無住地化は、日本資本主義にとっておいしい話
- あとがき
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。