本かつお
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●なぜ気になったか
2025年6月、最近のお気に入りエッセイストは「古賀及子」さん。2作品読んだが、どちらも評価は5段階の4。4月末出版の『おかわりは急に嫌』を読んでいないうちにもう次作が。熱が冷めないうちに本作も読まねばっ!
●読了感想
タイトルがとてもしっくりくる内容。主張してこない輝きを掬い上げる感性に出会えてとても楽しめた。ロボ掃除機でこれだけのことを書けるなんて、さすが日記を書く目的が、「作文に興奮したいから」と言い切るだけあると納得
アマゾンレビュー
●心に響いたフレーズ
- 中学生の娘がこう言った。「あしたは一日、休みなんだ。暇をふせげるかなぁ」暇を、つぶすのではなく、ふせぐと表現するのか。(中略)、私の暇は、私がふせぐ。いさましくもある。
- 非日常ではない、日常がかすかにふるえるような手応え
- これからはアンテナショップに行ったら、できるだけ地味な郷土菓子を狙うことにしよう。遠くの県に古くからある味は、自分から距離のある味だ。それを知りたい
- 拗ねていては、人生はつまらない
- 食後に大きなりんごを剥いた。りんごが大きい程度でうちの家族はどよめく
- 友人が、2泊3日の旅行から帰ってきた際、部屋のクーラーがつけっぱなしだった話を聞かせてくれた。(旅に疲れた自分を待ってくれていた冷えた部屋だが)、何一つ嬉しくない。まず友人がやったのは「クーラーを切る」ことだったという。どうせまたつけるのに
- 食後にNHKの『ダーウィンが来た!』で恐竜の特集を観ていると、娘が「どの恐竜になりたい?」と聞くから笑ってしまった。娘はなんでもとにかく貪欲に自分ごとにするから感心する
- ついに完全に秋がきた。明らかにこれは長袖という気候。(中略)、服が暑いのではなく、服が暖かいという感覚さん、久しぶり
- 家族の間で、記念日とは別に年に一度の日を作る
- 今年も楽しかったなぁと息子が言うと娘が、「心をこめて言うほどのことでないけど楽しくはあった」と息子の感慨の量を控えめにして、結果、これは家族の創意を絶妙に言い表したと思う
- 娘はまだ寝ていた。夏休みは寝るぞと意気込んでいたから、目標に向かって邁進しているのだと思うとだらしないようだが意識は高い
- ふつう待ち合わせは、待ち合わせた場所で待つものだと思うのだけど、娘は私を見つけると必ずこちらへ向かってくる。ほんのちょっとしたことながらすごくチャーミングで、私も真似したいと思いながらなかなかそういう機会がない
●目次
- はじめに
- 1章 身近な未体験にふれる
- あまりにもきっぱりとした世界との隔離
- この家がすこしずつきれいになっていく謎
- おへぎとは何か
- これは情報なんかじゃない、味だ
- 23年ごしでハーゲンダッツのクリスピーサンドを食べる
- シエスタ、終わらない昼休み
- まやかしの無料に惑わされて
- 存在だけの味がする
- 体を鮭が遡上する
- 2章 過去を振り返って思い出すように気づく
- 漏れ出て立ち上がる殺しきれない人々の気配
- 眠れるロボット掃除機を起こして
- 自分には天真爛漫に読んでほしい
- 八木アンテナが立っている
- マクドナルドのホットケーキが思い出だけど新鮮
- 私の映画のいびつな記憶
- 思わぬ静かな廃れ
- 20年前みんな飲んでいた和民の生グレープフルーツサワーを思い出す
- もう閉業してしまったバイト先に似ている
- いったい私はいま何をやったのだろう
- 3章 アナログの質感に気づく
- この修道院ではを飼っている
- わざわざの手前の写真
- あまりにもなまなましい生活の迫力
- 家電全般のテレポーテーション・ガン的なところ
- 心をこめて言うほどのことではないけれど楽しくはあった
- 4章 あたらしい暮らしに気づく
- 永遠に観るものがなかった私へ
- 水をたくさん飲む人の日傘
- 暗証番号が必要ない世界の驚くべきスムーズ
- スーパーで「売り場移動型セルフレジシステム」を使ってみる
- 積みストレッチではじめて知る変な動き
- 持ち帰った途端大きくなるもの、家具と雑草
- 雨の中を歩く体と心のこの堂々としたさま
- 肉を買うのはいつまでもちょっと怖い
- 5章 これまでやってこなかったことをやる
- ファイナンシャルをプランすることへの懐疑
- 正月は毎年9月にくる
- 張り切る4DXの水しぶき浴びて
- 公園を歩く、すみずみで生きられる
- 徒歩より電車より具体的に切ないドライブの終わり
- 私はこの枕で寝るのを楽しみにしている
- 6章 家事に気づく
- どうでもいい歴史はくり返す
- 料理をはじめたばかりの頃に使っていたレシピ本でご飯を作る
- これが健康日本21の体
- 一日に必要な量の野菜と果物をちゃんと計算して食べる
- スパゲティ3人分のパスタソースは、うどん3人分には多い
- 家族揃って最大限に味わう洗濯槽の汚れ
- 聞いたところでよくわからないまま世界は輝き続ける
- 7章 身近な未体験にふれるおかわり
- このサラダはがちゃがちゃに混ぜてあるからおいしい
- ページをめくることはまばたき
- 塗った首だけが冬だ
- 毛根を通じて伝わる髪のたゆたい
- つないだラジオを大地に放す
- 名前の知らなさに、既知を漂白される
- つい買ったものにある無意識らしい手触り
- 苦労をぶつけたのだ日記帳に
- つま先立ちで見る世界
プロフィール
「観る読む歩く、釣る食べる、求められれば写真撮る」そんなマイペースな人生を淡々と・・・。